『生きがい』STORY
石川県能登の山奥。
土砂災害の被災現場で、崩壊した家の下から一人の男が救出された。
見守っていた人々から声をかけられるも、元教師で「黒鬼」と呼ばれる山本信三は鋭い眼光を残し、去っていく。
避難所になじむことができない黒鬼は、崩壊した自宅の一角で暮らし始める。
ある日、被災地ボランティアたちが黒鬼の自宅の片づけの手伝いに訪れた。
壊れていたり汚れて使えなくなったものを処分していくボランティアたちだったが、
あるものを捨てようとして激怒した黒鬼に追い出されてしまう。
ボランティアが捨てようとしたのは、黒鬼にとって、唯一の理解者であり、今は亡き妻の形見の茶碗だった。
後日、亡き妻のことを知ったボランティアの青年が再び黒鬼の元を訪れる。
彼もまた、大切な人を亡くしており「自分と同じだ」と、黒鬼に心のうちを語りかける。
青年の話を聞いた黒鬼は、被災にあい倒壊した家に閉じ込められていた間のことを話し始めた—

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